事業推進の裏にあった、いくつもの壁

安江工務店の転換期となった1999年。大手住宅メーカーの施工代理店として約25年の歴史がある同社の指揮を執ることになった現代表の安江は、潜在的なリフォーム市場の可能性に注目した。
「当時、住宅会社は家を建てた後のフォローを十分に行っておらず、お客様から住まいの困り事の相談が多く寄せられていました。地域のニーズにきちんと応える会社がないなら、当社がその役割を担おうと決意しました」(安江)
しかし、そう意気込む安江に対して周囲の目は冷ややかだった。「大手住宅メーカーの施工代理店としての売上が大半を占め、リフォーム事業は赤字続きのお荷物事業なのに、なぜ力を入れるのか」と。
――「できるわけがない」「きっと無理だ」という反発の声。無我夢中で走る日々に、支えになったのは「絶対にできる」と自分自身に誓った決意だけ。たとえ小さな案件でも手を抜かずに対応すれば必ずリピーターになってくれる。そして、その積み重ねがシェア拡大に繋がっていくことを信じ、リフォーム事業を推進していった。
同時に、昔から社内にあった暗黙の決まり事や価値観が、ビジネスの世界で評価されている考え方と共通点が多いことに気づいた安江は、社員の行動指針を示す「クレド」を作成。現在、「話しましょ、たくさん」をスローガンにお客様との対話を重視しているが、創業間もない頃は『建築は心の通う対話から』という標語が掲げられていたという。社長が代わり、事業構成が変わっても、地域のお客様に対する姿勢は変わらなかったのだ。地域密着でお客様の立場に立った対応を行うという姿勢を企業の文化、哲学にまで高め実践してくことが、顧客満足の向上はもちろん、今までなかった社内の一体感を生み出し、企業成長を後押ししていた。
ニーズに呼応する、新たな市場の創出

安江工務店の企業成長を裏付けるのが、着実な多店舗展開。2003年の千種店出店を皮切りに、2010年には5店舗目を出店し、名古屋市内のほぼ全域をフォローする体制を整えた。拡大したのは店舗数だけではない。自然素材を使った「無添加リフォーム」の提案にも力を入れ、壁紙から接着剤まで全て自然素材を用いた施工で、シックハウス症候群やアレルギーなどに関心の高いお客様のニーズにも対応。2009年には不動産事業を立ち上げ、物件の仲介や売買にも着手し、2011年には1年間の準備期間を経て新築の受注も開始した。大手住宅メーカーの施工代理店として蓄積した技術とノウハウが、今、着実に花開いている。現状に満足することなく、挑戦の火種を燃やし続けることで、成長軌道を描こうとする同社の姿がそこにあった。
「不動産部門と新築部門はまだ走り始めたばかりですが、これで住まいのどんなニーズにも応えられる社内体制が整いました。リフォームのお客様が住み替えを希望されたときには新築や中古住宅の提案を、新築を考えておられるお客様が土地を探したいときには不動産の情報をというように、サービスの可能性はますます広がっています」(安江)
時代とともに変化する人々の生活スタイル。そこにいかに柔軟に対応できるかが未来を勝ち抜くための近道となることを、安江をはじめ社員一人ひとりが実感している。
100億円企業への道筋

目指す先には、『2016年、売上100億円、社員数250〜300人、愛知県下で20店舗展開』というビジョンがある。『6店舗で売上高24億円、社員数109名』という現在の立ち位置から見ると、難しいのではと思うかもしれないが、それでも安江には確かな戦略が見えているという。
「愛知県の人口は約740万人。この人口規模でリフォーム市場は推定2200億円といわれているので、3%程度のシェアを獲得すれば約70億円となります。加えて、現在強化を図っている不動産部門や新築部門が30億円規模の事業に育てば、売上高100億円も決して不可能な数字ではないと確信しています。といっても、成長一本やりで経営にあたっているわけではありません。何か異常の兆しを察したときには、いったんブレーキを踏む勇気を持って、足元を固めながらビジョンを実現させたいと思います」(安江)
当然、そこには現場の社員の力が必要不可欠。どんな仕事でも必ずお客様の要望に応え、結果を出す。たとえ「網戸一枚を張り替える」というご依頼でも、そこに傾ける熱量は変わらない。不可能と思える要求に出会うこともあるだろう。本気で頭を下げることも一度や二度ではないはずだ。しかし、その日々を乗り越えた先には、顧客満足という対価が待っている。お客様との信頼を構築しつつ、どんな市場の変化にも対応できる柔軟性と、時代を先読みする先見性を持ち続けることが、100億円企業への道筋を描く安江工務店の原動力となることは間違いないだろう。

